「ほんじょの鉛筆日和」 本上まなみ

読んでいるとニマニマ・ニコニコしてしまいます。
気持ちがしょげているとき、身体がこわばっているとき、
お風呂に浸かりながら読むと、心身ともに息を吹き返します。

ほんじょさんの和み雰囲気(オーラ)って
常々「素敵だなー良いなー」と思っていたけど、
このエッセイを読むとその雰囲気がどこから来るもの
なのかがよくわかる。憧れです。

生きることを楽しめる人は天晴れなり。

ほんじょの鉛筆日和。 (新潮文庫 (ほ-14-2)) ほんじょの鉛筆日和。 (新潮文庫 (ほ-14-2))
本上 まなみ

新潮社 2006-06

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「ガール」 奥田 英朗

働く女性の栄養ドリンク的作品。
スカッとします。

短編集の主人公はみな30代。会社での社歴も10年越え、中には役職付きになって部下を持つ女性の主人公も。ありそうで意外となかった、働き続けている女性が直面することや気持ちの揺らぎを綴った作品。
働くOLというと唯川恵の作品が思い浮かびますが、もっと主人公たちがサッパリしているというかナヨナヨウジウジしてないのが新鮮。ちょっとオヤジ入ってるところなんかもなかなか。

1話目の「ヒロくん」が痛快で良かった。男尊女卑思想の男に立ち向かう女性の話。
ヒロくんというのは主人公が自分のダンナをそう呼んでるのだけど、このダンナさんが良い。
妻より収入が少なかろうと、妻が出世しようと僻んだり不機嫌になったりしない。
弱気になって帰ってきた奥さんには優しく寄り添って挙げる。本当に器が大きい人というのはこういう人なのではと思います。

そういえば唯川恵「肩越しの恋人」を読んだ母が、
「そんなさー、みんながみんな、四六時中恋愛のことばーっかり考えてるわけじゃないと思うんだよね」
と言ってけど、私もほぼ同意。そればっかの人ももちろんいるし、そういう時期が人にはある
というのもわかるけど、女性だって社会では男性のように仕事や会社のことを考えるのだ。

というわけで、早速母親にこの本を貸したのでした。多分気に入ってくれるはず。

ガール (講談社文庫) ガール (講談社文庫)
奥田 英朗

講談社 2009-01-15

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「30歳で生まれ変わる本」 安井かずみ

30歳で生まれ変わる本―本当の大人になるために (PHP文庫)
安井 かずみ
4569567967

突然ですが、よく自己啓発本を読みます。それでも一時期(数年前)に比べれは減った方だけど、やっぱり精神的に落ち込んだり不安になったりすると手に取ることが増えます。

そこでこの本。タイトルからして単刀直入というか、直球だなーと思いますが
著者が安井かずみさんというので気になって読みはじめたら・・・これまたかなり良かった。
●参考:安井かずみ-wiki

私自身、ちょうどこの時期ひとつの大きな決断をして精神的にも疲弊していたせいもあり
この本の中で安井さんがそれこそストレートに力強い言葉で綴るメッセージが
ズシンと心の中に入ってきました。
私の中で「毒があるほど力強いメッセージ」といえば岡本太郎ですが、
その女性版とも言うべき、力強さを感じさせました。
「ハンサムウーマン」のイメージがピッタリ。親友があの加賀まり子さんというのも合点がいきます。

その力強い言葉の中には、これは!というのがたくさんあり、何箇所もページの折り曲げが
ついてますが、その中でも「私が考えていたことはまさにこれ!」と思った部分を紹介。
それは「感動する」ということについて。

『感動するにはよき知識が大前提である。それが何だか解らなければ心も動かないのである。
根深い執着心で、それは”何”だろうと学習し、憧れ続け、
やむにやまれぬ思いで、それと対面した時、どーっと感動が押し寄せるのだ。
感動するということは知的行動である。だから感情的とはまったく違うのだ。
そんなお涙頂戴的なことではない。

感動とは自分の内にある星と、その対象物が放射する星が、すごい光を持って正面衝突することなのだ。
だから、自分の内に星がなければ、対象物がいくら光を放射しても、衝突しようがないではないか。
感動は一方的にもらえるものではないのだ。自分の方は無関心で、無知で興味がなければ先方がいくら素晴らしくとも、すれ違いが起きるだけである、残念であるが人生はつまらないものになろう。
感動を求めない人に感動はこない。』

私が情報を求めるのは、そこから知識を得て、最終的には「自分が感動したい」からだということが、この文章を読んで実感できたのだった。
”すごい光を持って正面衝突”・・・うん、納得。

もうひとつご紹介。女性の年代期を表すとこのようになるとのこと。

『十代は夢を見て、二十代は自由奔放し、
三十代はセクシーで、
四十代はインテリジェントで、
五十代はスポーティで、
六十代はエレガントで、
七十代はヘルシーで、八十代は存在そのものがご立派』

そのあと、「だから30代こそ女はセクシーでなければならない」と続けている。
ふむふむ。セクシーといっても外見のわかりやすいセクシーさのことではないのですよ。
つまりはしっかりとした一人の女性としての存在感とセンス、というのが
ますます大事になってくるってことなんだろうなぁ。

私ももうすぐ30代の入口。安井さんのように確固とした自分を持ちつつ
ステキな女性になれるよう、精進いたします。

「オぉジョオします」 鴨居まさね

オぉジョオします (クイーンズコミックス) オぉジョオします (クイーンズコミックス)
鴨居 まさね

集英社 2006-03-17

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これは大当たり。
そうよ、これこれこの感覚。うれしかったりちょっと切なかったり、
人生まんざらでもないなと思ったり。

短編集の主人公はみな20代後半から30代というのも、ちょうど私とかぶるから
なおさら共感度が上がるのかも。
それにしても、この作品は今の私にとって”しっくりくる”んです。

収録作品は、
「オぉジョオします」「地に足がついてしまう」「蕾また蕾」
「ぜんぶ糸のせい」「手袋を脱いでスタート」の5編。
どれもステキでじわじわきます。

「オぉジョオします」の主人公の旦那さんの健気さや
「手袋を脱いでスタート」の主人公が遠慮して言えなかったことをダンナさんに伝えるシーンは
キュンとします。「夫婦」というのもいいものだなぁと。

TSUTAYAでレンタル読みしたけど、これは「買い」だなと思いました。
手元においてまた読み返したくなるはずだから。常備薬のような存在になりそう。

鴨居まさねさんの作品はここ2ヶ月の間になんとなくTSUTAYAで借りてみて
読んだらどれも良くて。ちびりちびりとお酒を味わうがごとく、少しずつ読んでます。

そうそう、鴨居さんご本人のblogがあることを今日知りました。スバラシイ。
http://kamo.typepad.jp/blog/

「風の歌を聴け」 村上春樹

風の歌を聴け (講談社文庫) 風の歌を聴け (講談社文庫)
村上 春樹

講談社 1982-07

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アンチ村上春樹(のつもり)だったんですが。。

やられました。

ずっとプロローグとモノローグを積み重ねていくようで
するすると皮膚に浸透していき

終盤、気づいたら涙で目が潤んでいてびっくりした。

悲しいわけでも切ないわけでもなく、
ただ、自分の奥底に沈んでいて長いこと
取り出されることのなかった感情が不意に
浮上してきた。呼び覚まされる感覚。

「つまり、どこにも行き着けない」
あぁ、やっぱり村上氏はわかっているのだ。

「デッドエンドの思い出」 よしもとばなな

不幸と思われる状況の中にも見方によって
みえるささやかな光のように。

しんとした静けさの中に
感じる暖かさを描いた作品。

短編集の中でも特に
表題作の「デッドエンドの思い出」は
書いてくれてありがとう、と
ばななさんに言いたい。

--—
家族とか、仕事とか、友達とか、婚約者とかなんとかというものは、自分に眠るそうした恐ろしい色彩から自分を守るためにはりめぐらされた蜘蛛の巣のようなものなんだな、と思った。そのネットがたくさんあればあるほど、下に落ちなくてすむし、うまくすれば下があることなんて気づかないで一生を終えることだってできる。
--—表題作より引用

あぁ、やっぱりそうだったんだ。
随分前に気づいていて、
でもずっと目をそらしきたことを、
主人公を通して改めて確認できた気分。

それはやっぱりひんやりとした感じだけど
見方によっては気づけてよかったとも思えるのでした。

満足度:★★★★★

デッドエンドの思い出 デッドエンドの思い出
よしもと ばなな

文藝春秋 2003-07-26

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パークライフ 吉田修一

淡々と。ライトだけどお洒落すぎず、感傷すぎず。
現実のモノから(主人公の想像によって)異次元
に飛んでいく感覚が面白い。
日比谷公園=人間の内部みたい、だなんて。

でも油断してると、ハッと胸を突かれる表現が
ここかしこに。

「自分には何も隠すことがないってことを、
必死に隠している」

「周りの人たちとうまくやっていきたいからこそ、
土日くらいは誰とも会わず、誰とも言葉を交わさずにいたい」

ハッとしてしまったあなた。
何かが起こりそうで起こらない日常を
違った角度でかみしめたい人へ。

ぜひ。

満足度:★★★★☆

パーク・ライフ (文春文庫) パーク・ライフ (文春文庫)
吉田 修一

文藝春秋 2004-10

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幸福な食卓  瀬尾まいこ

小説で声をあげて泣きながら読んだのって
一体いつぶりだろう。

気持ちのよい文体。
ずっとその世界に浸っていたいような心地よさが、
一瞬にして悲しみに変わる。

それはまるでドラマのワンシーンのようで。
すごく映像的。
だけど全体には小説ならではの
おだやかな空気感・匂いに満ちあふれている。

主人公の女の子が、あまりに自分の高校時代と
同じで嬉しくなってしまった。
10代のとき読んでたら、きっとバイブルになっていた。

自分の周りに思春期の女の子がいたら、絶対読ませたい。
そう思わずにはいられない、心強くなれる作品。

満足度:★★★★★

幸福な食卓 幸福な食卓
瀬尾 まいこ

講談社 2004-11-20

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