雪が思い出させてくれたこと

夜、表参道のカフェを出て帰ろうとしたらぼたん雪が降っていました。近年の東京は降ってもすぐ雨や霙に変わって溶けてしまうから、きっとすぐに止むだろうと地下鉄に乗って帰りました。
ところが最寄り駅に着いたら一面雪景色。地面も屋根もしっかり積もってる!寒さもそっちのけでその本降りに嬉しくなり、バスではなく自転車で帰ることにしました。

手袋はめて、傘を片手に(ほんとは危ない、からそろりそろりと気をつけて)自転車をこいでいると、
目の前にはしんしんと降り続ける雪の粒。
人通りも少なく、街灯と雪で白くなった夜道を進んでいくうちに、ふとよみがえった記憶。
それは祖母と歩いた雪の夜道。

確か私は小学生。10歳前後ぐらいでしょうか。
きっと親戚の家へ祖母と出かけた帰りだったのでしょう。特に何かがあったわけではありません。
栃木の田舎に住んでいた私たちは、夜8時ぐらいでも街灯がちょっとあるくらいであとは真っ暗な夜道を
手をつないで駅から歩いて帰ったのでした。しんしんと雪が降る無音のような音を聴きながら。
子供ながらにその静けさと暗闇が少し心細く思えたのかもしれません、手をつないだ祖母と遠くに光る街灯だけを頼りに歩いたのでした。

きっと静かな雪の道をみてそのときの記憶が蘇ったのでしょう。不思議なものです。
特別なことがあったわけでなくても、なぜか覚えている幼少の記憶。
一瞬にして20数年を飛び越えたような感覚に嬉しさと、懐かしさに
かじかむ手の冷たさも忘れて笑いながら自転車をこいでました。