エリアナ、エリアナ

日差しに夏の訪れが感じられた昨日、御茶ノ水まで出かけてきました。
アテネ・フランセ文化センターで開催されていた
国際交流基金提供アジア映画より「アジア映画の巨匠たち」
でリリ・リザ監督作品「エリアナ、エリアナ」を観るため。

ここは2年前にもヤスミン・アハマド監督の「ムクシン」などを観た場所。
今回はずっと観たいと思っていたインドネシアのリリ・リザ監督作品の上映に
運良く駆けつけることが出来ました。

「エリアナ、エリアナ」(原題:Eliana, Eliana  2002)は
地方から大都会ジャカルタへ上京したきり音信不通だった娘と、
その娘に5年ぶりに再会した母。
2人の葛藤をジャカルタの一夜と共に描いた作品。

率直に言ってしまおう、私はこの作品がとても好きです。
観ていた終盤、不意に「ものすごく好きだ!!!」という気持ちが湧き上がってきました。
こんなに作品にひき込まれたのは久しぶりでした。

ひとつには私がかつて留学していたジャカルタの街の情景がとてもリアルに感じられたこと。
単にリアルというより、映画的なフィルターを通してちゃんと質感のある映像として観られたこと。
どう表現したものか難しいけど、かつてウォン・カーワイが「恋する惑星」で描いた香港の風景のような感じと近いような気がします。

もうひとつには、抑制の効いたストーリー。
これまで私の中でインドネシア映画とはベタに笑いや涙を誘うものか、独特の映画文法を持つ作品の
どちらかというイメージがありました。でもこの「エリアナ、エリアナ」はどちらでもなかった。
感情の機微をちゃんと掬い取って描いているところに
正直、「インドネシアにもこんなに世界へ通じる感覚の映画監督がいたんだ!」と感嘆し
観ながら感激してしまいました。

ジャカルタの夜を懐かしさだけなく新鮮さと共に味わえ至福のひととき。
DVD欲しくなってしまいました。インドネシアに次に行ったときに見つけたいです。
その前に、まずは自分の本棚に眠っているこの作品のノベライズ(数年前ジャカルタで購入)を読もうと思います。

画像:Copyright Japan Foundation