「デッドエンドの思い出」 よしもとばなな

不幸と思われる状況の中にも見方によって
みえるささやかな光のように。

しんとした静けさの中に
感じる暖かさを描いた作品。

短編集の中でも特に
表題作の「デッドエンドの思い出」は
書いてくれてありがとう、と
ばななさんに言いたい。

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家族とか、仕事とか、友達とか、婚約者とかなんとかというものは、自分に眠るそうした恐ろしい色彩から自分を守るためにはりめぐらされた蜘蛛の巣のようなものなんだな、と思った。そのネットがたくさんあればあるほど、下に落ちなくてすむし、うまくすれば下があることなんて気づかないで一生を終えることだってできる。
--—表題作より引用

あぁ、やっぱりそうだったんだ。
随分前に気づいていて、
でもずっと目をそらしきたことを、
主人公を通して改めて確認できた気分。

それはやっぱりひんやりとした感じだけど
見方によっては気づけてよかったとも思えるのでした。

満足度:★★★★★

デッドエンドの思い出 デッドエンドの思い出
よしもと ばなな

文藝春秋 2003-07-26

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