3連休を利用しての奈良の旅。 着いて早々、夜の唐招提寺(とうしょうだいじ)へ。
6日は中秋の名月。
普段は夕方5時に閉まってしまうお寺さんでも、
この日は観月讃仏会で夜まで空けてくれてるのです。
お天気は曇り。境内を一巡して御影堂に入ると
色鮮やかな障壁画がほのかな明かりに照らされて
不思議な青緑色を放っていました。それは見たことのない発色で。
東山魁夷が鑑真和上のために描いたといいます。
御影堂内には30人くらいの人たちがいたでしょうか。
私と友人が軒下に座って休んでいると、突然「わーっ」と歓声が。拍手も聞こえます。
皆が空を見上げていました。 私たちもつられて見上げます。
すると、厚い雲に覆われていた月がうっすらとその姿を現しました。
霞がかった雲は、流れの速い風でどんどん流れていき
やがて月がそのまんまるな形を、私たちの目の前にみせてくれたのでした。
満月の光って、こんなに明るかったんだ。
単純に、そのことがとても驚きでした。
夜空の闇が濃いからこそ、あれだけの光を放つのかもしれません。
ただその場に立ち、ずっと月を観ていました。
どのくらい観ていたのでしょう、ふと振り返ると、
まだその場に居る人たち全てが月を見上げていました。
ご婦人も、おじさまも、スーツ姿の青年も、小学生の男の子も、お坊さんも。
みんなの顔が月明かりに照らされています。
そのとき強烈に感じたこと。あぁ、これってずっと変わらないんだなぁと。
昔も今も、いつの時代も、人は月を見上げてきた。
そう強く実感したとき、ふと奈良時代と今この時が通じたような感覚になりました。
御影堂の瓦屋根越しに観た満月は脳裏にくっきり焼き付けてきました。